ダーモーダラ・リーラの始め、クリシュナはバターを作っている母ヤショーダーを邪魔しようとしました。シュリーマド・バーガヴァタムの10-9-4にこう描かれています。
母ヤショーダーがバターを掻き混ぜている間、乳を飲みたがっていた主クリシュナがやってきました。母ヤショーダーの超越的至福を拡張しようと主は攪拌棒を握り、掻き混ぜる邪魔をしました。
クリシュナは自身の母への愛情を示すために攪拌棒を握ったのはもちろん、母ヤショーダーがバターの攪拌をやめ、息子に乳を飲ませることで愛情を示す機会を与えるため、ヤショーダーの邪魔をなさったのだとアーチャーリヤたちは説明しています。
ジーヴァ・ゴースヴァーミーによると、クリシュナは4つの方法で母ヤショーダーの母を魅了なさりました。
1 普段、クリシュナは早く眠りにつき、遅く起きるのに、その日は特別に早く目をお覚ましになった。
2 いつもならそばにいる母親がいなかったため、自分から母ヤショーダーの元に向かわれた。
3 攪拌棒を握ろうとなさった。(母ヤショーダーはクリシュナがどこを握れば攪拌が止められるのか理解できるほど成長したことをとても誇りに思いました)
4 ミルクを与える牛がたくさんいるにもかかわらず、クリシュナは母ヤショーダーの母乳をお求めになった。
この1節だけでも、アーチャーリヤの解説を読んでいくと、たくさんの重要な意味が含まれています。もっと深く見ていきましょう。
1 なぜ母ヤショーダーは朝早くバターを作っていたのか
母ヤショーダーがそもそもバターを作っていたのは、クリシュナのために最高に美味しいバターを作れば、クリシュナはもう近所からバターを盗んだりしないと思っていたからです。
また、ヤショーダーはバターを作りながら、クリシュナの栄光を歌っていました。それは私たちへの見本でもあり、一見物質的に見えることでもクリシュナの御名を唱えたり聞いたりしながら、心をクリシュナに没頭させれば、主は私たちの元に近づいてくださるということを教えています。
もう一つ興味深い解説があります。
このダーモーダラ・リーラが行われる前、母ヤショーダーが土を食べたクリシュナに口を開けさせた際、クリシュナの口の中に全宇宙をみるという遊戯が繰り広げられました。その時母ヤショーダーは自身の息子への溢れんばかりの愛のせいで、口の中に全宇宙を見たにもかかわらず、クリシュナを神として受け入れることができませんでした。
母ヤショーダーは主を神として受け入れなかったため、次のリーラでは紐(グナ)を使ってミルクを混ぜているのです。ここで知っておきたいのはgunaグナという言葉は「縄」、そして物質界の三様式の「様式」を意味する(サトヴァ・グナなど)ということです。もちろん母ヤショーダーは解放された魂であり、彼女がクリシュナを主として見なかったのは、クリシュナのヨーガ・マーヤの力によるものなのですが、彼女が縄を使ってミルクを攪拌している動作は、クリシュナを至高主として受け入れなければ、物質自然の様式(グナ)に縛られることになると、私たちに教えているのです。
2 クリシュナが自ら母ヤショーダーのところに向かわれた理由
一つ目の理由はミルクが攪拌されている場所に現れるという評判を守るためです。神々と悪魔たちの戦いの中で、両者はミルクの海を攪拌し、ネクターを取り出そうとしていました。その遊戯でヴィシュヌはダンヴァンタリやモヒニ・ムルティなどの様々な化身として、その場に7回現れました。同じように、ここでもミルクが攪拌されていたので、クリシュナは現れたのです。
二つ目の理由は母ヤショーダーが朝早くから自分の思い、言葉、そして行動をクリシュナへの奉仕に使っていたからです。誰も見ていない早朝からミルクをかき混ぜていた母ヤショーダーのように、私たちも朝早くチャンティングをすれば、クリシュナは私たちの元にやってきて、膝下に座ってくださることを教えているのです。ジャガンナータ・ダサ・ババジによると、brahma muhurta ブラフマ・ムフルタと呼ばれる、朝の3時から7時は主チャイタニヤ・マハプラブご自身が自ら主への恍惚的な愛をみんな配り歩いているため、とても吉兆な時間帯だそうです。
3 クリシュナが攪拌棒をお握りになった理由
もちろんクリシュナが攪拌棒を握ったのは母ヤショーダーにかまってもらうのが目的なのですが、より深い意味も担っています。
経典を学ぶプロセスをmanchanamというのですが、それは攪拌するという意味も持っています。経典を学ぶ目的はクリシュナを見つけることです。人格的なお姿を持つクリシュナを見つければ、経典を学ぶ目的をすでに達成できたことを意味します。クリシュナは攪拌の動作を止めることで、ヴェーダを学ぶ究極の目的を教え、母ヤショーダーが目的をすでに達成していることを示しているのです。
また、母ヤショーダーはバター作りを母親の義務として行っていました。しかしもうすでにクリシュナへの崇高な愛を育んでいたため、クリシュナはもうその義務を放棄してもいいと母親に示しているのです。ヤマラージャはクリシュナへの愛を育まず、与えられた義務を捨てる者をyamaraja-danda 棒で罰します。しかしクリシュナは自ら攪拌棒を持つことで、「母ヤショーダーはすでに愛を育んでいるからその罰を心配しなくていい」、そして「もしヤマラージャがやってきても、自分がその棒で母親を守る」のだとお示しになっているのです。
深い!
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